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テックマジック電気設計エンジニアの田島です。
元々は教育用として開発されたRaspberry piですが、最近では産業用途でも注目されています。タッチパネルを使用して調理ロボット制御のGUI環境を構築するのに役立ちます。
ところで、Raspberry piを使用する上で注意しなければいけない点として電源の問題があります。OSのベースがLinuxの為、電源を切る際にはシャットダウンする必要があります。シャットダウンを行わずにいきなり電源を抜くと最悪の場合、SDカードのファイルシステムが壊れ、再起動出来なくなってしまう可能性があります。
対策として、UPSを接続する事やファイルシステムをREAD ONLYにしてSDカードへの書き込みが出来ない様にするといった事が考えられます。
ただし、UPSを使用する場合は電池を使用する為、定期的なメンテナンスが必要だったり、ファイルのROM化ではSDカードへのデータの書き込みが出来ないといったデメリットもあります。
何か良い方法はないかと探していたところ、Juice4haltという製品を見つけましたのでご紹介します。
Juice4haltとは
スロバキアにあるNelectra s.r.o.という会社が開発しているUPS基板です。UPSと言っても電池ではなくスーパーキャパシタ(コンデンサ)を使用している点が特徴的です。
電池では無いので、電源が切れた時は1分程した電源が持ちません。これは、電源断時にRaspberry piを動作させ続けるものではなく、安全にシャットダウンする事だけに特化した製品となります。
この製品の利点を挙げると、メーカーのデータシートに書かれている通り、
- メンテナンスフリー
- 火災や爆発の危険性が無く、過充電の危険性もない
- コンデンサの為、輸送時は完全に放電出来る
- 動作温度範囲が広い(-40℃~+85℃)
などがあります。
ただ、残念なのは対応しているのがRaspberry pi Models B+, 2, 3で、4には対応していない事です。
Juice4haltの使い方
ハードウェアの設置は簡単で、Raspberry piの1~26ピン部分にJuice4haltをのせて、Juice4halt側のMicro-USBにACアダプターを接続します。
後は、メーカーのサポートページの通りにセットアップを行えば、完了です。そうすると、電源投入時にコンデンサに充電する時間がかかりますが、その後Raspberry pi OSが立ち上がります。また、電源が切れると自動的にシャットダウンしてくれます。
セットアップの手順は、
- ダウンロードページより、shutdown_scriptとrebootj4hをダウンロードします。
- /home/pi/フォルダに、”juice4halt”フォルダを作成し、更に”bin”フォルダを作成します。
- 作成した”bin”フォルダにダウンロードしたshutdown_scriptとrebootj4hをコピーします。
4.nano等のエディタで、“/etc/rc.local”を開きます。ファイルの最後の行に
記載されている“exit 0”の直前に下記の記述を追加し、セーブします。
/home/pi/juice4halt/bin/shutdown_script &
5.ターミナルにて下記コマンドを入力し、権限を変更してシャットダウンスクリプトが実行出来る様に変更します。
sudo chmod 755 shutdown_script
6.Raspberry piを再起動すれば設定完了です。
Juice4haltを使ってみた感想
取付やセットアップ方法も分かりやすく、簡単に自動シャットダウン環境を作れるのでとても便利だと思います。Raspberry piをサーバーで使用する用途でなければ電源管理の選択肢の一つとなるのではないでしょうか。
今回はJuice4haltの一番基本的なモデルを使用しましたが、上位モデルではRS-485とRTC(Real Time Clock)が搭載されたものもあるのでアプリケーションの幅が広がりそうです。
購入は、Juice4haltのWebサイトから出来ますので、ご興味がありましたらご覧下さい。