まず題名に「おっ」と思わされたので買ってしまいました。
「食のロボット」を標榜するTechMagicのエンジニアがこのタイトルを素通りするわけにはいかないですね。著者は原島さん(クックパッド)と橋本さん(オムロンサイニックエックス)です。
世に看板だおれのエーアイ書籍が多い中、この本の内容はまったく題名通りです…自然言語処理と画像処理の技術に対して、料理や調理など食に関する応用を解説しています。どちらについても、まずはバックグラウンドとなる技術の説明を試み、次に実際の料理のアプリや関連技術について解説してます。
たとえば自然言語処理なら形態素解析、構文解析、オントロジー、といったものを解説したあと、実際のレシピ分類や検索、レシピ生成などの個別の技術について触れていきます。
画像処理ではまず画像とは何かから始まって、画像認識、物体検出、領域分割、カメラの話などが続き、それらの応用である料理認識、FoodLogや自動レジなどの話に続きます。後半はちょっと雑多な話題に振りすぎな感がありますが、いろんな分野への興味のとっかかりとしては良いと思います。
個人的に良いなと思ったのは、様々なデータセットの紹介と解説がたくさん載っているところです。
アカデミアで定期的に学会や論文をチェックしていないとなかなか知れない情報なので、まとめて紹介してもらえるのはありがたいですね。まあ、これらのデータセットは主に研究論文用なので、実際の調理ロボットの実務では自分たちでちまちまとデータを集めることが多いのですが…。
話題がかなり広範にわたり、関連する基礎知識も広いので、この本の記述からそれらをすべて得るのは当然不可能です。ある程度「分かっている」人向けなので、たとえば初歩的な機械学習の本やオンラインコースを受講したエンジニアなら楽しく読めるのではと思いました。そして本題と関係ないのですが、文中でほぼ「AI」「人工知能」という言葉が出てこないところ(意地でも使わない気概?)が個人的には非常にポイント高かったです。楽しませていただきました。